ブログのお引っ越し


長年お世話になったこの「Blogger」からブログ「Tawagoto Club」をこの5月に新規リニューアルをした小生のウェブサイト「Funky Monk Temple」に引っ越すことになりました。
ブログページはこちらのリンクです。

尚、当分の間こちらの「Blogger」も据え置いておきますが、新しい記事はFunky Monk Templeにアップして行く予定です。

これからもどうぞよろしくお願い致します。
                                    合掌


Funky Monk Temple





ホトケさんこんにちは






「ああ、ありがたい・・このままそちらの空(くう)の世界へ連れてって頂いても結構でございます」

座禅をしているうちに、えもいわれぬ至福の状態になった冗甚の前に阿弥陀仏が現れたので申し出た。

「“連れてって頂いても”というのは連れていって頂かなくてもよいということかね?」

「あ、いや、その、あの、そですね、んと、どちらでも、いやどちらかといえば連れてってもらいたいです」

「そもそも私の住まいは極楽浄土であって、空の世界ではない」

「ああ、そう、そうでしたね、そんじゃその極楽浄土に連れてっておくんなさい」

「その前に訊ねるが、その“連れてっておくんなさい”と私に言っているのは誰かね?」

「誰って、そらあもちろんワタクシしかおりませんじゃありませんか」

「ほう、それではそのワタクシというのは誰かね?」

「そらあもちろんワタクシ、冗甚でありますよ、あみださま」

「今、ワタクシと冗甚と二人出てきたがどちらかね?」

「どちらっつったって、両方ともこのオレです」

「ということは、ワタクシと冗甚はオレなのかね?」

「はい、そうです、ワタクシと冗甚はオレです」

「それではワタクシはオレで、冗甚もオレなのかね?」

「あ、はい、ま、そういうことになりますかね」

「ということは、オレというのは二人いるのかな?」

「え?‥んもお、いやだなぁわかってるクセにぃ。オレはオレですよひとりに決まってるじゃありませんかぁ、オレしかいないんだから」

「オレしかいないと申すが、ワタクシと冗甚はどこへいったのだ?」
「あ?え、いやいや、どこにも行きゃぁしませんです、ここにちゃんとおりますです」

「二人とも?」

「はいはいはい、二人じゃありませんが、もちろんでありまっす、ここにおるです、ワタクシも冗甚もおるっすよ」

「オレはどこへいった?」

「あ?・・ああ、そです、オレもいますよもちろん、んだからワタクシと冗甚とオレ、ちゃんとここにいます、見りゃぁわかるでしょぉ・・!」

「というとワタクシと冗甚とオレ、計三人だな?」

「ぶひ、あ、いぃや、んだからぁ、そじゃなくてぇワタクシも冗甚もオレも同じ人間なので一人です。んもぉお、いやだなぁ、あみださまイジワルしちゃあイヤですよ、わかってるクセにぃ、そんなこと聞かなくたってわかりそうなもんですよ~。そもそもなんでもお見通しなんでしょぉ?・・ははあ、わかった!なんだかんだナンクセつけて連れてってくれないつもりなんでしょ?ほとけさまがそんなケチだとは知らなかったですよぉ!んも~なんでダメなんですかぁ?」

「ほほう、もしかして、イライラしてきたかね?何か怒っているような感じがこちらに伝わってくるのだがね。ところで先程までの至福はどうしたのかね?お前は瞑想の中で最高の至福を味わっていたのではないかね、あの極上のエクスタシーはどこへいったのかね?」

「そ、そんなこと言ったってさぁ」
と苛立ってきている感情の勢いが胸のあたりで呟いたが、次の瞬間、内側から突き上げるような強烈な何かに圧倒され絶句してしまった。

「・・・・・・!!」

阿弥陀は冗甚のその様子を慈悲の眼差しで見守っている。

吾に帰った冗甚はあわてて言った。
「あ、うわ、そ、そ、そですね、うわ・・いやぁ、あのその、そうですよね、さっきまで、そう、あみださまがお出ましになるまでは絶好調だったんです、はい、あはは、あ、いや、そ、そ~なんですよ。んもお、そら最高の幸せってんですか、至福っていうんですかね?・・ね、そんなやつが降り注いじゃってですね、いやもうかつてない感じの、なんか、ね、すごいやつが・・、そ~なんです、なにせ誰もいなくなっちゃって・・もうなにもかもが消えちゃって、はい、一切のものから解放されちゃったみたいな、ね、はい、そ~なんですよ、はい。んだからあみださまさえ出てこなかったらね・・あ、そじゃなくて、あはは。あ、いや、その、そういう意味じゃなくてですね、えと、はい、なんでこうなっちゃったんだか、ね、わかんないっつうか、なんつうか、ね・・」

「その通りだ。私さえ出てこなかったらお前は空(くう)の中にいたのだ」
「え?はあ?あらら、あ、い、いや、その・・うぐぐ・・」

「私が連れて行くまでもなくお前は空の世界に寛いでいたのだ。究極の極楽を味わっていた。だが目の前に私が現れた。仏の出現でビックリした上に有り難くなってしまったお前の心は、ある種の達成感と共に揺れ動き、娑婆の煩悩世界に戻ってきたというワケなのだ。ぐふふ」
阿弥陀は吹き出しそうな笑いをようやく押さえながら言った。

「えええぇ~、それじゃなんで出てきたんですかぁ?」

「随分とお前がイイ感じになっていたので、ちょっとイタズラしてみようかなっていうことだ」

「そ、そんなあぁ・・!ええぇ、そんなあああ!ほんとに、もう・・こう言っちゃなんですけどね、イジワルなんですねぇ、ホトケさまのくせにぃ。だってさあ、なんか、もうちょっとでさ、なんかさ、イイ感じだったんですよおお・・」

「そうだな私が現れた時に、そこのホトケ、邪魔だからあっちに行けとかなんとか言えば私もおとなしくどこかに行ったのだ。だが、なんかお前が有り難がるもんだから、なんか、ほら、からかってやろうかなんて思っちゃってさ・・はは」

「ええー!そ、そんな、思っちゃってさ・・はは・・じゃありませんよ!なんかホントめちゃくちゃヒトが・・じゃなくてホトケが悪いですねぇぇぇ!」


冗甚に向かって合掌をしている仏の姿が次第に朧になり中空に去ろうとしていた。
ほとんど消えてなくなるその瞬間、阿弥陀は最後に言った。

「連れて行くとか行かないは、アミダの時に言う言葉・・・・」

語尾の残響が辺りを暫く行き来していたが、次第に小さくなり消えた。

全き静寂だけが残された。
















妙好人 冗太郎



加山雄三の大ファンでもある令和の妙好人(*注)、冗太郎が今夜も独り仏壇の前で呟いていた・・。

しあわせだなぁ
ぼかぁあみだといるときが
いちばんしあわせなんだ
ぼかぁきみをはなさないぞ
いいだろう?

てか はなれないぞ

てか はなしてくれないぞ

てか はなれられないぞ

てか くっついてとれないぞ

‥あんりりり ぼかぁきえちまったぞ

てか きみもいねえぞ

あんりあんり~・・どしたもんかね‥

んでも‥しあわせだなぁ

てか だれがいってんだ?


まいにち「てかてか」いっていた冗太郎はアタマがてかてかになりましたとさ。

なんまんだぶつ




*注:妙好人(みょうこうにん)とは、浄土教の篤信者、特に浄土真宗の在俗の篤信者を指す語である(Wkipediaより)。参考文献として鈴木大拙著「妙好人」、柳宗悦著「妙好人論集」などがある。




インドのお寺にて


インドのお寺
聖なる雰囲気に溢れた沈黙の中
本堂に美しい音楽が流れてきた

おおなんと素晴らしい‥
あたかもこの静寂に溶け込んでゆくような得もいわれぬ旋律‥!
おおなんと美しい・・!

次の瞬間‥「ハロー‥」
誰かが電話にでると同時にそれは消えた


「あんりゃりゃりゃん!」
ココロがズッコケた

他の出演者がノリノリの音楽で踊っている最中に茂造じいさん(*注1)が
「もしもし」と電話に出て全員がズッコケる‥
その場面をうっすらと思い出しながらココロは見事にズッコケたのだった

着信音も瞑想的‥これがさすがインドというものなのでせうか‥



*1:茂造じいさん。言わずと知れた吉本新喜劇の辻本茂雄が演じる爺さんキャラ。





極端極短小説 「おんせんきもちよかった」




ほろ酔いかげんで上機嫌のジョージは日本一の“温泉三昧人間”として有名な親しい友人と電話でいつものように長話をしていた。
今日行ってきた丹沢の温泉のことを大好きな新潟の銘酒景虎をちびちび飲りながら、だらけた笑顔で話している。

「そらあね、オタクさんが気にいるような温泉じゃねーかも知れねんですけど。
いくらマイナス一千兆サーラ(*注1)持ってるっつったって、この娑婆じゃ凡夫(*注2)の末席にぶら下がってるアタシみてえなもんには何ともありがたく浸からせて貰えるいい湯なんでゲスよ、ああた」

「あんらぁ、なにげにマイナスサーラ持ち自慢しとりゃ~すの、おみゃぁさまは」

「いやいや~そんなつもりはカミに誓ってねえでゲスよ、アタシは仏教徒でありんすがね・・あはは」

庭の草叢では心地よい虫の声が秋の夜長を彩っていた。

*注1・「サーラ」
精神世界研究者としても知られる科学者ダイジョロン・ツカヒーラードン博士が提唱する霊的徳性ポイントの単位。
肉体世界を輪廻転生することをインドの言葉で「サンサーラ」といい、広義でこの世、娑婆世界を表す。
人間は自らの本性に目覚めない限り現世に生まれ変わり続け、永遠にこの世の「苦」を味わい続けなければならないと言われているが、ダイジョロン博士は霊的世界に於けるサトリのポイントを貯める事によって無駄な輪廻を避け、いち早く解脱することができることを発見した。
サーラが少ない方が良いとされ、数値がマイナスになればなるほどニルバーナ到達に役立つとされる。
因みにこの現実世界に住む人間の平均値は3サーラであり、サトリから程遠い数値である。
博士は長年の研究により、サトリを我がものにするには少なくともマイナス百億サーラは必要であると2012年に発刊された「スピリチュアル実話」(*注中の注A)9月号誌上で述べている。

*注2・凡夫(ぼんぶ)
煩悩に操られている人間

*注3・注も含めここに記されている内容は真実であるという確証は宇宙の隅々まで探しても見当たらないはずであるが、これを読んでも腹が立たないヒトは幸せであるということは言うまでもないことである。またそのようなヒトは少なくともマイナス1000サーラ(注1参照)は獲得できるのではないかとダイジョロン博士は著書「霊性ポイントを貯めてニルバーナへ行こう」の中で述べている。

*注4・注の方が長くてかんわぁ、とろくせぇこと書くんでにゃ~わと名古屋方面の方々にお叱りを頂きそうだが、どえりゃぁ申し訳にゃぁとお詫び申し上げる次第である。

*注中の注A・「スピリチュアル実話」
実はプレアデス星団に事務所を持つといわれるベネフィット真空社が発行しているという噂があるが、未だ日本ではこの雑誌を見たという者は誰もいない。





鳥肌レトルト君のカレーなる挑戦



カレーがオレに挑戦してきた。レトルトのやつだ。
近くのスーパーで買い物をしている時、カレーが並んでいる棚を通りかかった。

そういや、いまレトルトカレーってのはどんなやつがあるんだ・・?
立ち止まって眺めていると「鳥肌の立つカレー」と書いてあるパッケージがある。
「なんだってえ?・・鳥肌ですかい、チキンカレーだからかね・・」
とかなんとか想いながらそいつを手に取った。

え?なになに、「何度食べても肌が粟立つほどの感動の逸品」だと?
「カレー専門店の味を超えるレトルトカレーが可能であることを証明してみたかった」だってえ・・!?

美味くて鳥肌が立つなんてえことは尋常なことじゃねえですよ。
オメエ、まさか・・挑戦してんのか?オレ様に?ああっ?!
インドカレー大好き歴ウン十年のこのオレ様に向かってここまで大胆不敵に言ってのけるとは良い度胸してんじゃねえか・・。

おおーし、わかった!こんだけのこと言ってるだけでもホメてやるぜ。
この自らハードル上げまくりの大口タタキだけでもホメてやる。
オーケー、この挑戦受けて立とうじゃねえか。
どっからでもカカッてこいや~、このトリハダやろ~めが!

・・ってえことで挑みかかってくるこいつをカゴに入れ“挑戦受付料”数百円をレジで支払い家に持ち帰った。

そらまあ言ったもん勝ちみたいな世の中、嘘も100回つけばホントになる・・てな娑婆世界ってことは重々承知してるオレだ。これだけ派手にスゴイこと書いとけば最低一回は売れるんじゃねえか・・というような商法かもしんねえな・・というウタガイはハナからある。いや、ほとんどそんなようなもんだろう・・。

しかし、もしかしてホントに美味くてトリハダが立ったらどうしよう、しかもレトルトで・・そうだとしたらすごいことだし、かなり嬉しい出来事だ・・とホノカに期待する気持ちもカスカにある・・というのはカレー大好き人間ゆえの貪欲、BONNO~というものなのか。

果たしてこの「鳥肌の立つカレー」の果敢なる挑戦はいかに?
相手は世の中の美味いインドカレーを悉く味わってきた大巨人であ~る。その立ちはだかる巨大な壁を打ち砕くことが・・いや、その身体にトリハダを立てることができるのだらうか?

パッケージを開けると中袋パウチが出てきた。
ここにも書いてある・・「美味しさのあまり鳥肌の立つ本格インドカレー」
ほほう、中袋であってさえも声を大にして宣言している。
中袋パウチ・・そうだ、これはこの挑戦を受け入れた者にしか見ることのできない領域であるのだ。
しかも“本格インドカレー”と言うことによって、世界王者であるオレ様の最も得意とする分野に挑んでいるということを殊更強調し、挑発している。

このパウチに書かれたダメ押し的な宣言の意味するところは?
可能性は二つある。
ひとつは調理して(もちろんレトルトなので湯煎するだけだが)パウチを開ける直前まで過剰な美辞麗句のエナジーを使い相手の味覚を司る脳みそに幻想ダメージを与え、美味いと思わせてしまうというマインドコントロール的なフェイク戦術。
二つ目は挑戦者の心底から発するホンモノの自信。決して大言壮語ではない、これはめっちゃホントに美味いのだという真実の叫びのようなもの・・。
う~む、だとすればワザワザ中袋にここまで書く必要はないのだらうが・・。

いずれにせよホントのことは試合が終われば判ることだ。要はこれを食べたチャンピオンの身体に美味さのの感動で鳥肌が立つのか否かなのだ。

挑戦者の申し出どおり5分温めたそれをナベからつまみ上げパウチ上部の端にある切り込みに手をかけ一気にピューっと開ける。
ちょっと斜めに傾いていたので飛び出したルーがパウチをつまんでいる左の親指にかかった。「アチッ!」
油断もスキもない、しかしながらこれは南インドのカレーのようにネバリがないシャバシャバなスープ状のものゆえの“飛び出し”であることが判る。かなり挑戦者をナメて試合に臨んでいる王者に軽くジャブを打ってきたのか。
「ナメてんじゃねえぞ、ナメんならお前の指でもナメておけ」と熱せられたルウの一部を浴びせかけてきたのだらうか。

ライスの盛られた皿にその全部を注ぎ、湯気がふわーっと立ち上りカレーの香りがあたりに漂った。

そして・・・
試合は終わった。
王者がカレーとライスをスプーンで口に入れた瞬間・・試合はあっという間に終わってしまったのだった。
ザンネンながら若き挑戦者は為す術もなくノックアウトされた。
その挑戦は一秒ももたずに退けられた。
トリハダは立った・・あまりのオソマツさにトリハダは立った・・。

この試合、ボクシングなら試合開始のゴングが鳴った瞬間にチャンピオンのストレートが顔面にヒットして、あっという間のノックアウト。
野球なら一回表に打者3巡くらいして30点入っちゃった感じ。
サッカーなら開始5分の間に10ゴール入っちゃったみたいな・・
殆ど試合にならないやつ。観客が金返せ~っとかブーイングするだろな的なやつなのだった。

ただ辛いだけ、風味も何もない。少しの油っこさ・・王者の腹が減っていたというアドバンテージも活かすことのできないまま、挑戦者は一瞬にしてノビてしまった。

オレも微かとはいえ期待もあったのだよ〜ん。
もうちょい試合を楽しませてくれよ~的な想いも入り混じり、ちょびっとだけ悲しくなった・・。
あっけなく終わった試合後のココロに去来する想いには、少しだけスパイスが効いていた・・なんつって。













思えば・・


思えば・・
12才の時、突然父が逝った
悲しかった とてつもなく悲しかった
そしてそれが旅の始まりだった
生死を超えた何かを求める旅
さまざまな景色が通り過ぎていった
時には苦しみ 時には喜び 束の間の色模様が流れていった

不可思議な見知らぬものに導かれるように美しい体験もしたが
多くは蜃気楼のように儚く消え 後には以前と同じ闇が広がっていた
相変わらず深い闇の中で何かを掴もうと藻掻いていた
絶望していた しかも絶望した自分を受け入れずに無理して笑っていた
これでいいのだと自らに言い聞かせながら

しかし・・
存在は私を見捨てなかった
師と出会った 
とてつもなくありがたいことが起こった
深い感謝が私の全身全霊を打ち振るわせた
存在は師を通して私を救った 
本然の吾を思い出し 私は生と死から救われた

そしてこの夏の終わり 母が肉体を離れた
肉体を去ろうとする最後の日々
とてつもない静寂の中にくつろいでいた

母と私は生死などに触れられようもない場所にいた
肉体が有ろうが無かろうが何も変わらない永遠の場所
ただひとつのいのち
母も子も溶け去り消え果てた久遠の生命だけがある
そのような不可知な光がただそこにあった

父の死に始まった生と死を超えたいと渇望する旅
母が肉体を去る時 旅は趣を変えていたことを告げていた


さまざまな
想い 押し寄せ夏の暮れ
いざ母旅立つ歌添えて

天からの花を仰ぎて歌うたう
魂の詩 母の旅立ち

生も死も
思い煩うことのない
ここにあるこれ母笑う

生も死も
何も変わらぬこの生命
ここにあるこれ母笑う

生も死も
触れられずにあるこの生命
永遠(とわ)にあるこれ
母子消えて

静寂の大安心ぞ 永遠の詩
有無はるか超え 母子溶け去りて